やはりこの作品のタイトルにも触れずばなるまい。
連載時のタイトルは『人生ちょっと休んだら〜あちこち逃げる車中泊』。ウェブ連載ページで名残りが見られる。
しかし仮題は『失踪旅』だったそうである。その方が内容に断然合っているように思うが、出版社側の事情や考えが色々とあるようだ。(なお、下のツイートは私への返信ではない。)
仮のタイトルは「失踪旅」でした笑 たまには全部置いてどこか行きたくなりますよね。
— 菊池真理子/11月20新刊「壊れる前に旅に出た」「うちは「問題」のある家族でした (@marikosano_o) 2023年9月29日
連休、ぜひどこかに!!
私が引っ掛かったのは、たぶん「休んだら」という部分。疲れを取り除いて「元の快適な暮らし」を取り戻そうという意味にも取れる。それでは筆者が長年生きづらさを抱え続けて来たという背景が抜け落ちてしまうではないか。
そこで作者とのやり取りの中で、うっかり調子に乗って連載時のタイトルについて「フリーペーパーのミニコラムじゃねーぞ」と毒づいたら「タイトルは私がつけた」。やってしまった……作者を全力で殴ってどうする。
菊池さんのエッセイ漫画は、一見マイルドだけれど実は「おこげ」がおいしいのだと思います。
— 小鹿 (@kojikafawn) 2023年11月5日
その点、今の題はこの連載漫画の珍味妙味が感じられず残念です。フリーペーパーのミニコラムじゃねーぞと。(題つけた人ごめん)
単行本化の折には「失踪旅」の3文字は何らかの形で盛り込んでほしいです。
タイトル、私がつけたので大丈夫です笑 こんなふうになるとは思わなかったんですよね😅
— 菊池真理子/11月20新刊「壊れる前に旅に出た」「うちは「問題」のある家族でした (@marikosano_o) 2023年11月5日
そして単行本のタイトルは『壊れる前に旅に出た』。
そんな切迫感あったか?
冒頭のこれらのくだりは一体なんなのか。
「とりたてて毎日に不満はない」
「だけど時々ふと」
「何にも縛られないところに逃げたい」
「逃避行みたいな 失踪みたいな 突然の無計画旅――」
壊れるなんて物騒なものではなく、もっと曖昧模糊とした閉塞感から抜けだしてみたというのが旅の始まりだったではないか。
単行本のタイトルに釈然としない気もちを抑えつつ、作者に「意外でした」と控えめに感想を伝えたところ、作者は「逃避行」という言葉を入れたかったとか。
せめて副題にでも作者の意向を取り入れるわけには行かなかったのだろうか。